『ある違和感』(二熊さんの皮モノ合同誌に寄稿)
Added 2019-01-01 13:14:11 +0000 UTC二熊さんの『季刊TSF皮モノVol#1』に寄稿させていただいたSSをFANBOX限定で公開します。
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私は今、どこにいるのだろう。意識が戻って最初に思ったことはそれだった。
冷たい板の床で、私は寝そべっていた。まだぼんやりとした頭で、ここは私の部屋ではないということだけはわかった。私の部屋の床はじゅうたんを敷いているから、こんなに床の感触を直に感じることはないはずだ。
そうこうしているうちに意識が戻ってくる。あわてて身を起こす。
「ここ、どこ……?」
見回して私はゾッとした。殺風景で狭苦しい、汚いアパートの一室。脱ぎ散らかされた男の衣類。
ここは男の部屋だ。そうわかると、私は思わず自分の身体を確かめた。よかった、服は着ている。少しシワになってしまっているけど、それはきっと寝そべっている時に付いてしまったのだろう。乱暴されたような形跡はない。私はほっと胸を撫で下ろした。
この部屋は一部屋しかないようで、すぐに玄関が見えた。視界に入っている範囲では人影もない。この部屋の主はどこへ行ってしまったのだろう?そもそも私はどうしてここにいるのだろう?女の私が自ら進んで彼氏でもない男の家に来るわけはないと思えた。アルコールも飲んだ記憶がない。とすれば。
「誰かが私をここに連れてきた……?」
そう考えるのが自然だった。焦りながら、混濁している記憶を探る。私はハッとした。
「私、あの男に変な注射をされて」
そのあとは恐怖で言葉にならなかった。
*
決して不用心だったわけではない。けど、タチの悪いストーカーにあとをつけられていたのに全く気付かなかったのは悔やんでももう遅い。あの時、帰宅途中だった私がドアを開けて家に入ろうとするなり、その小太りの男は私の肩を掴み、ドアを開けて部屋の中まで押しいってきたのだ。
殺される。その男は女の私より体格はとても大きく、力では敵わないことはすぐに分かった。私は恐怖で顔を引きつらせて、声を出すことすらできなかった。
男は興奮しながら自分のポケットに手を入れ、注射器を取り出した。それが私の腕に刺されて──
*
そこまでが私の思い出せる記憶だった。ここは、あの男の部屋に違いない。私はあの注射で眠らされてここまで連れ去られてしまったのだ。私は恐怖で歯をかちかちと鳴らしながらも、よろよろと立ち上がった。とにかくここから逃げなくては。
男のものであろう薄汚れた運動靴は何足かあったが、私の靴はそこには当然無かったから、裸足で外に出ざるを得なかった。男の靴はあまりにも汚く、それを履くよりは足が地面で汚れた方が幾分マシに思えた。素足に小石の感覚を感じながら外に出て一目散にアパートの階段まで走る。誰かに見張られているのではないかと心配していたけど、周囲に人影はなかった。
近くにタクシーが走ってきた。私はなんとか呼び止め、乗り込む。家まで行ってもらおうとして私は気づく。
もしかしたら、あのストーカー男は私の部屋にまだ居るのかもしれない。駄目だ。あの部屋に1人では戻れない。私はタクシーの運転手に、彼氏の隆太の家を行き先に告げる。震える手で、隆太に電話をかけ、事情を話す。
タクシーを降りると、家の前で隆太が待っていた。
「唯、大丈夫か」
私は何も言わず隆太に抱きつく。ホッとして力が抜けたのか、自分の力だけで立つことができない。結局その日は隆太に一晩泊めてもらった。不安で仕方なかったけど、隆太がずっと強く抱きしめていてくれたから少しだけ安心できた。
翌日は日曜日だったから、隆太に付いてきてもらって私の部屋まで行った。鍵はあの時から掛けていないから空いていた。私のハンドバッグはあの時のまま玄関に置いてあったけど、特に何も奪われていなかった。
「唯、盗られてるものとかなさそうか?」
「うん、大丈夫みたい。ありがとう、隆太」
私は弱々しく笑顔を作った。私の下着とかも確かめてみたけど、私の記憶の範囲では盗られているようなものはなかった。
次の日からは、緩やかに日常が戻ってきた。私は何事もなかったように会社に行き、いつもの仕事をこなした。流石に前日までのことが堪えていて、少し仕事もぎこちなかった。隆太は同じ会社の先輩にあたる人だったから、帰りは待ち合わせてなるべく一緒に帰るようにしていたからか、そのあとストーカーも一度も現れることはなかった。
──でも、「あの日から何かが変だ」と、私の直感は訴え続けていた。その違和感がなんなのか、しばらくは正体がわからなかった。仕事の時も、帰ってからシャワーを浴び、パジャマに着替えて彼氏とメッセージをやり取りしている時も、その違和感は付きまとっていた。
すべてが、新鮮すぎるのだ。頭でも打ったのだろうか。私の記憶の中には、確かにこれがいつもの日常だという認識がある。でも、いざその「日常」に浸かってみると、まるでそれが「初めての体験」のような、とても新鮮で不思議な感覚に陥るのだった。
特にそれは、鏡で自分の姿を見たときに顕著に現れた。鏡に映っているのが、20代の女である私であることは普通なはずなのに、見慣れた私自身のはずなのに、妙に新鮮な気分で自分の身体や衣服を凝視してしまう。
私は自分の身体をねっとりと眺めながら、なるべく艶めかしくその服を一枚ずつ脱ぎ捨てていった。その度に私の内面で、爆発するような、抑えの効かない衝動のような妙な興奮があった。下着に収まった自分の胸を上から眺める。ネットのエロ画像で見るのとは違う、生のおっぱいがそこにはあった。思わず、おお、とため息のような声が漏れる。
私は恥ずかしいことに、自分の身体を鏡で眺めながら自分を慰めてしまった。こんなことは記憶の中にもない、初めてのことだ。でも私は恥ずかしい気分の他に、自分のシミひとつない綺麗な身体を見て昂ぶっている自分の気持ちを発見していた。
鏡越しに自分とキスをする。自分の舌を全て舐めとってしまうかのように、鏡に映った自分の舌を舐め回す。そうしながら濡れた股間をいじると、「記憶の上では知っていたが未体験の」快感が私を支配した。その快感に溺れている顔があまりに煽情的で、私は自分のイキ顔を見ながら絶頂し、その絶頂に達する私自身の表情がまた艶めかしく絶頂し、それが私であることにまた興奮して絶頂し──何回も、何回も、何回も、何回も──あり得ないくらいの快感に溺れていった。
*
「あの男の家に行ってみたい?」
彼氏の隆太は眉をひそめた。
「そうなの。私、あれから何か変で」
何が変なのか、私が鏡の前で何をしたのかは流石に言い出せなかった。
「何かされたのか」
「わからない。けど、あそこに戻らなきゃいけない気がする。あの家に何か手がかりがあるのかも」
隆太は暫く考えた後、
「わかった。じゃあ俺も付いていくよ。1人じゃ危ないだろ」と言った。
「ありがと、隆太」
私は微笑みながら、なぜか、隆太にイライラしていた。この優男。本当は私とセックスすることしか考えてないんだろう?男なんて皆そうだ。私だってこんな綺麗な女がいたらヤりたいと思う。
──私はハッとした。私は何を考えているんだろうか。やっぱりおかしい。
「どうした、唯。大丈夫か?病院行くか?」
心配そうな隆太の声。
「なんでもない。なんでもないの。今から行こう」
あの男の家に。
*
その男の部屋は鍵が空いていた。もしかすると、あれからこの部屋の主は一度も帰ってきていないのかもしれなかった。勝手に人の部屋に入るのは気が引けたが、今はこの私の違和感をどうしても解消したかった。
「唯、俺は奥を見てくる。気になるところを探しててくれ」
隆太はそう言うと、部屋の奥に入っていった。男の部屋は狭いが、物が辺り構わず散乱していて、何かを探すのはとても骨が折れそうだった。
私はうん、と気のない返事をして、洗面台の前に立った。鏡の前に私が映る。やはり、「私が私になっていること」に、私は言いようもないような興奮を覚えていた。思わず顔がニヤけてしまう。ああ、まさか、まさか。
俺がこんな若い女になることができるなんて。
私はそこでハッとする。俺?若い女?私は私のはずだ。今、「私は誰の思考で考えていたのだろう?」
私は恐怖に顔を歪めた、鏡の中の私自身を見つめながら後ずさりをする。
ビリッ。
音がした。
「痛っ……」
痛覚のした方を見やって私はギョッとした。壁に何か……出っ張った釘のようなものが出ていた。後ずさった拍子に、それで私は腕を切ってしまったらしいが、驚いたのは全く別のことだ。
私の腕が「破けている」。私の腕の皮膚は、皮膚というよりは、そう、衣服のように破けて──裂け目から、明らかに私のものではない毛むくじゃらの……男の腕が見え隠れしていた。
ひっ、と声をあげてしまう。あげてしまってからなぜか私は「しまった」と思う。あいつに気づかれる。
「どうした?何かあったのか?」
遠くから声が聞こえる。あいつだ。隆太だ。私は平静を装って応える。
「ううん、何でもないの。見間違い」
「何かあったら、すぐ呼んでくれよ」
「うん、わかってる。ありがと」
そのやり取りの間に、私──いや、「俺」はすべてを思い出していた。
そうだ。俺はこの女の身体を乗っ取ったんじゃないか。
再び洗面台に向かう。整った顔を歪め、いやらしくニタニタと笑う女の顔が映っている。顔こそ、この女のものだが表情はまるっきり俺そのものだ。鏡を見ながらベタベタと俺はこの女の顔を触る。
*
あのとき、俺は「この女」──坂橋唯の部屋に押し入った。前々からこの女のことを狙っていた。一人暮らしで、この時間に家に戻ってくることは分かっていた。部屋に有無を言わさずに唯ごと押し入る。そして俺は、唯を羽交い締めにしがなら、ある老婆からもらった「皮にする薬」を注射したのだ。
唯はしばらく恐怖に顔をひきつらせながら抵抗を続けていたが、バタバタとしていた手足がそのうちパタパタ、と空を切り始めた。唯は何が起きたかわからないようで、恐怖と疑問が入り混じったような顔をしていたが、やがて自分の手足がまるで布か何かのようにペラペラになっているのを理解すると、息を飲み、その後叫ぼうとした──
が、声にならなかった。唯が叫ぼうとした頃には既に身体はおろか喉のあたりまで「皮化」は進んでいて、もう唯は一言も発することができなくなっていた。唯が最後に見たものは俺の満面の笑みだったろう。そして目の焦点が徐々に合わなくなり──唯は皮になった。
皮になった唯をくるくると手持ちのカバンに入れると、何食わぬ顔で唯の家を出て、俺は自分の家に戻った。俺は愉しくてニヤニヤと笑いながら、自分の服を脱ぎ、全裸になった。俺の毛むくじゃらで太った、薄汚い身体とも今日でおさらばだ。俺はこの皮を着て、坂橋唯になるのだ。
興奮で俺は勃起していた。皮になった唯の背中はぱっくりと割れていた。まるで、何かを受け入れるように。靴下か何かを履くような要領で、俺は「唯に脚を通す」。一瞬、唯の脚が俺の脚の形に膨張するが、すぐにこなれてきて、また元の細い唯の脚になる。
おお、と俺は声をあげる。不思議な感覚だった。俺の上半身はそこにあるのに、脚だけは黒いストッキングを履いていた唯の脚そのものになっていた。そのままぐい、と唯の皮を引き上げる。俺の勃起したモノと尻を、唯の下半身の皮が包み込む。同じように、一瞬ぐにゃりと唯の下半身が膨張するが、スッとまた収縮していく。俺は先ほどまで感じていた勃起する感覚を全く感じなくなっていた。初めて味わう股間の喪失感と、股間にフィットした女の下着とストッキングの感覚。
これが、女の下半身の感覚か。俺は上半身は男でありながら、下半身は完全に唯の外見と感覚を手に入れていた。興奮するが勃つモノはそこにはなく、ただただ股間とその奥がじわじわと熱くなるのを感じていた。はやる気持ちで俺は、唯に手を通す。同じように膨張し、そして収縮。俺の手は細く白い、女の手になっていた。手の爪はネイルサロンでも行っているのか、綺麗に装飾されていた。いつの間にか、背中の穴は閉じている。そして俺は、「頭以外のすべての唯を着込んでいた」。
「ぐふふ」
思わずくぐもった笑いを漏らすが、既に喉まで皮を着込んでいるので、笑った俺の声まで唯の──女の澄んだ声だったことに俺は、今度は女のようにくすくすと笑う。
服の上から女の手で胸を揉んでみる。ブラジャー越しにではあるが、確かに揉まれている感覚がする。
「うひひ、ひひ、ひひ」
唯の声でまた堪らなくなって笑ってしまう。俺は男のはずなのに、女の手で、女の指で、自分の豊満に育った胸を揉んでいるのだ。
さあ、ついに本番だ。俺はついに、ついに坂橋唯になるのだ。
唯の頭の皮を被ったところで、俺の意識は途切れた。
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「まさかあの後、意識ごと唯になっちまうとはねぇ」
俺はあの後、どうも自分が唯だと思い込んじまったらしい。それで俺の部屋で目覚めた俺は、勝手に恐怖して勝手に俺の家から逃げ出して、タクシーに乗ってあの男──隆太に助けを求めたってわけだ。逃げるべき相手は自分だなんて、全く笑える話だぜ。
それでも唯の意識になっちまった俺は、どこかで変だと感じていた。それで鏡の前で唯になった自分を映して自分に欲情したり、オナニーしたりしていたってわけだ。
「そして……ぐふふ。まさかもう一度俺の家に来るなんてな。そこでたまたま皮が破れて、俺の本体が少し露出しちまって、それで俺はすべてを思い出したってわけだ」
俺は笑いを必死で堪えながら、鏡の前で唯のような表情をして、にっこりと笑ってみる。そこには数分前そうであったような、女の唯の顔があった。上品で整った顔立ちだ。「我ながら」美人だと思う。しかし数秒後にはまた元のニヤケ顔に戻ってしまう。あまりに愉快すぎたからだ。
さっきまで唯だった今の俺には、坂橋唯として24年間過ごしてきた記憶も同時にあった。それは、俺が坂橋唯に成りすまして今後の坂橋唯の人生を送れることを意味していた。俺は自分の細い女の身体を抱きしめた。
「悪ぃな唯ちゃん。50過ぎのオッサンの俺が、唯ちゃんの人生全部もらっちゃうよ。この瑞々しい身体も、優しいパパとママと弟も、素敵で美人なお友達との関係も、気持ちいい女としての性感も、全部全部全部全部」
全部、俺のもんだ。俺は今日から坂橋唯なんだ。
俺はスカートを履いているのも構わず、ガニ股でガッツポーズをとっていた。おっと。いけねえいけねえ。まだ、あいつがいるからな。
俺は洗面台にあった糊を手に取る。これは、皮が破れたときに使え、と「皮になる薬」をくれた老婆に言われたものだ。その時は半信半疑だったが、こうするんだろう。俺は糊を先ほど破れた唯の皮につけると、破れていた唯の皮はたちどころにふさがり、俺の毛むくじゃらの手は見えなくなり、そこには唯の白く細い腕があるばかりだった。
「唯?そっちは何かあったか?」
また隆太の呼ぶ声が聞こえた。俺はタイトスカートの上から、女の股間をさすりながら唯の声で応える。
「あっ……ううん、『こっちは何もない』みたい。ふふ、『本当に何もない』……あふっ……隆太は何か見つけた?」
唯のフリをしながら、隆太から見えないところで、俺は男の欲望を爆発させ、自分の女の身体をまさぐる。興奮して、思わず艶めかしい声が混ざってしまうが、隆太は気づいていないようだ。
「こっちは変なものを見つけたんだ、ちょっと来てくれないか」
しぶしぶ俺が隆太のほうへ行くと、隆太は「俺」のバッグを持っていた。
「これ、注射器みたいなのが入っているんだ。一本はカラだけど、まだ中身の入ってるものがある」
「へぇ、どれどれ」
言いながら俺は注射器を手に取る。
「唯、もしかしてこれを打たれたんじゃないか」
「うーん、そうだね。よく見つけたね。隠しておいたのに」
「ゆ、唯?何を言って……うっ」
言い終わらないうちに、隆太に注射針を突き立てる。
「な、なんで俺に刺してるんだよ、唯」
「はは、お前まだ俺が唯だと思ってるのか」
「何を言ってるんだ」
「隆太、私とっくのとうにストーカー男に身体を皮にされて乗っ取られてたみたいなの。自分でも気づかなかったけど」
俺は綺麗な自分の顔の眉をひそめ、深刻そうにしながら、コミカルに身体をくねらせた。
「前の私はあなたのこと大好きだったけど──今の俺はお前みたいな男は大嫌いなんだよなぁ」
「唯、何を言って……」
そこで隆太は俺の肩を掴もうとしたが、もう「皮化」は進行していたからうまくいかなかった。
程なくして隆太の皮ができあがった。俺は前と同じように隆太の皮をくるくると巻き取ると、俺のバッグに入れた。俺のバッグと「私」のハンドバッグ、両方持つのは女の身体ではやや重かったが、俺は「私」の家に戻ることにした。
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「あっ、はぁん、いいっ、そこっ、気持ちいいっ」
あれから一週間。俺は隆太にバックで突かれながら嬌声をあげていた。
「唯、唯っ、もうイくっ……」
「私もイっちゃうっ……ふぅっ……あっ……あはっ……」
昼にも会社の女子トイレでオナニーしていたから、感じやすくなっている。身体の奥からじゅん、と全身が熱くなっているのが自分でもわかる。俺は坂橋唯の身体で最高のセックスを愉しんでいた。
それにしても、俺の中にある唯の記憶からしても、「隆太」とこんなに気持ち良いセックスをした記憶はない。
「気持ちよかったよ……唯」
隆太が言う。いや、正確にはこいつは隆太であって隆太ではない。こいつの中身は、唯の親友だった女の子、夏帆だ。
あの後、隆太を皮にした俺は、夏帆をうまく騙して俺の──唯の部屋に連れ込んだ。唯の記憶と外見を使っている俺が、「親友」の夏帆に怪しまれる要素は皆無だった。そこで刃物で脅して隆太の皮を着せた。
隆太になった夏帆は、過去の俺同様、自分のことを隆太だと思いこんでいる。それで俺は、中身が夏帆の隆太とこうして毎晩セックスをしているというわけだ。
「うん、私も気持ちよかったよ。隆太、最近今までのセックスと違うよね。何かあったの?」
俺は何かあったことは分かりきっているのだが、あえて「隆太」に聞いてみた。
「わからないんだけど、なんか女の子の気持ちいいところがわかるような気がするんだ。昔、自分がそうだったような……」
「何言ってるの、隆太おかしい」
そう言って俺はくすくす笑う。まあ、お前はもともと夏帆っていう「女」だからな。女の気持ちいいところがわかって当然なんだよ。お前は隆太というおもちゃを操って、その調子でこの身体をもっと愉しませてくれよ。
「唯、もう一戦しようぜ」
「もう元気になっちゃったの?男ってしょうがないなあ……あん♡」
隆太になった夏帆は、唯の記憶の中の隆太より積極的だ。もしかして夏帆、もともとレズっ気があったんじゃないのか。早速上に覆いかぶさり、俺の勃起した乳首をコリコリと摘んでくる。同時に俺の股間を的確に攻めてくる隆太。その慣れた動きは、女の性感を知り尽くしているようだった。いや、ようだった、ではなく、実際に中身は女なのだから当たり前か。どこかで自分が女だったことに気づかせてやっても面白そうだな。
「ひゃあっ、あん♡女って最高♡」
女の身体だけではない。冴えない中年男だった頃には考えられないくらいのバラ色の人生が俺のものになっていた。女の性感をいやというほど味わいながら、俺は実を言うとそろそろ、他の身体も味わってみたいと思っていた。
まだ「皮にする薬」はある。そうだな、今度は今の俺の職場の後輩の彩ちゃんなんかいいんじゃないか。今の俺よりも巨乳だし、コレクションするのも悪くない。そうと決まれば──
「あっ、ああ、ま、またイっちゃうぅっっ!!」
次の計画を立てながら、俺こと坂橋唯は、女の人生で何度めかの絶頂を迎えた。