豊満の国 忘却編
露店での食事を一度終え、宿を探しに王都の中をお腹を抱えながら行く。我ながらによくこんなに食べられたものだと思うのだが、そう思いながらも食べた料理の味を思い出してはまだ食べたいと考えている。
「早いところ、泊まる宿を探さないと...。至る所に料理屋があるせいで足が勝手にそっちに行きそうになっちゃうし...。」
大通りを行くと景色が少し変わり、宿屋街に入った。どの宿も入り口がとても大きく、こんなに大きくする意味ってあるのかなと考えているとすぐにその理由がわかった。すれ違う人の体型が性別を問わず非常に大柄(オブラートに包んだ表現)でそれほどの間口が無いと通れないからだった。
「ああは、成りたく無いなぁ...。気をつけよう...。」
外壁が白く清潔感のある一際大きな1階建ての宿屋が目に留まった。あの宿屋にしなければいけない。そんな気がした。
「あの...。部屋は空いていますか?」
「ふぅ、ええ。空いてますよ。」
大門の受付のお姉さんよりもふくよかな女性が息を切らしながら答える。
「当宿は、はぁ。ふぅ。ごくっ。はぁ。どのようなお客様でも宿泊ができるように最大級のお部屋を、ふぅ。ご用意しております。それでは、お連れします。」
部屋の入り口は幅4mほどの自動ドア。部屋に入ると真っ先に目に入るキングサイズを超える大きさのベッド。普通の人なら10人は横になれるのでは無いだろうか。
「お客様は小柄なようですので、ふぅ。大きすぎるかもしれませんが、いずれ慣れると思いますので、こちらのお部屋をご用意させていただきました。」
「慣れるとは、一体どういうことです?」
「こちらの宿に泊まる皆様が、初めは大きすぎるのでは?と口にするのですが、気にならなくなるということです。」
違和感のある返答ではあったが気にしても仕方が無い。重たいお腹を抱えるのも疲れたので少し横になりたい。
「ルームサービスについてはお部屋に置いてあるパンフレットをご覧ください。」
「それでは、ごゆっくりおくつろぎ下さいませ。」
そう言うと受付の女性は広い自動ドアの真ん中を通り部屋を後にした。
「んー!あまりにも大きなベッドだけど、ふかふかでのびのびできるのはやっぱり良い...。」
ベッドに横たわった辺りで急な睡魔に襲われてしまった。抗えない眠気にそのまま眠ってしまった。
朝の日差しを浴びて目を覚ます。ずいぶんと目覚めの良い朝となった。ぐぅぅぅ。腹の虫が大きな音をたてて食事を要求している。
「ふわぁ...。昨日は気づいたら眠ってしまった。」
体を起こそうとすると違和感を感じた。昨日までは無かった柔かな感覚。シーツを剥がし下を向くとそこには大きく膨らんだ胸、その下には胸より突き出したお腹がある。昨晩までは細っそりとした身体だとは思えないほどに全身に脂肪がついていた。
「えっ...。なに...これ?」
ベッドを降りて立ち鏡の前に行く。顔にはほんのり肉がついている。脚は昨日までの約2倍の太さがあり、腕も二回りほど太くなっていた。特に顕著だったのが胸と、お腹である。薄い胸板だったのものが女性らしい膨らみのある胸を通り越して横に少し潰れた形になっている。くびれがしっかりとあったお腹周りだったが、りんごのようなまん丸なお腹がそこにはあった。
「いやぁ...。嘘でしょ...。たった一晩でこんなに太るだなんて...。」
一晩で信じられないほど太ってしまったアリサ。当然、身体に合うような服など持っていない。
「まぁ...。太ってしまったという事実はここにあるわけで。」
大きくなったお腹をぶにっと鷲掴んで納得する。
「このままじゃ、外にも出られないなぁ。昨日の今日でまだまだ食事は出来ていないし。そういえばルームサービスがどうこう言ってたな。」
机の上に置かれたパンフレットをパラパラと捲る。服の提供サービス?あまり聞かないものだけど、この際使えるものは使おう。
「すみませんが、服のサービスをお願いしたいんですけど。」
「係のものが、お客様のお部屋に向かいます。しばらくお待ちください。」
しばらく待つと自動ドアが開く。
「お待たせしました。服のサービスのご利用ですね。こちらをお使いください。」
手渡された服は、まるで私の体のサイズを知っていたかのようにちょうど良いサイズだった。ゆったりとした白地のワンピース。これで外に出られる。
「今日もこの王都の食文化を学ぶために色々と回ってみよう。」
大通りを歩いていると気づくことがあった。すれ違う女性のそのほとんどが、ふくよかなのだが、服装がワンピースばかりなのである。ぶるぶると身体の肉を揺らし歩いているが素肌は隠れるようになっている。
「これは、私もこの王都の仲間入りをしてしまったのでは?」
日中、さまざまな料理店を訪れてはその店のおすすめの料理を口にする。夜になる頃には10店舗以上を食べ歩いたのだが、どれだけ食べてもお腹が苦しくなることはなかった。
「お嬢ちゃん!なかなかの食べっぷりで感動したぜ!また明日もうちにきてくれよ!とびきりの料理を作ってやるからさ。」
最後に訪れた料理屋でも大量の料理を平らげた。その様子を見ていたのだろう。嬉しいお誘いに明日も来ることを伝え店を出る。宿に戻る道を行くとお腹をぱんぱんに膨らませた女性達がお腹をあらわに肉を揺らして歩いている。今朝はすれ違う女性は皆足元まで隠れるワンピースを着て歩いていたのに。
「ふぅ。今日も色々な料理を知ることができてよかったわ。明日も楽しみね。」
そう言いながら自室に戻る。立ち鏡からチラリと自分の姿が見える。お腹が大きくなりすぎてワンピースの生地が足りなくなっている。お腹の上半分だけが隠れる格好だった。
「えっ。この格好で歩いていたの?恥ずかしい...。」
服を脱ぎ、そのまま微睡むようにベッドで眠りについた。
むくっ。むくむくっ。ぶく。ぶくぶくっ。
「ううーん。よく寝た...。」
身体を起こそうとするが起き上がれない。どう言うことなのだろう。
「うっ。ふっ!はぁ、はぁ。身体が思ったように動かせない...。」
シーツをよけてベッドからなんとか降り、立ち鏡の前までやってきた。身体を眺める。ぷっくりと肉のついた手。垂れるように脂肪が重なる腕。さらに横に広がった胸。りんごのように丸かったお腹は肉の段がくっきりと付き、立派な2段になっている。下の段のお腹は垂れ、臍から深い谷間を形成している。上の段は横に広がる胸を支えるように大きく存在していた。お腹と同じくらい横に広がったお尻からズドンと生えている脚は肉がひしめき合い多くの段を形成している。
「うわ。これ私の身体...なの?ぶふぅ。」
昨日までの身体が嘘のような肥満体が全身の脂肪をぶるぶる震わせてそこに立っていた。
「ぶふぅ。おかしい。こんなに太るだなんておかしい。おかしい...けど、お腹が空いて食べ物のことしか考えられない...。」
ぐぎゅるるるるるるるる!!!!大きな腹の音が鳴り響く。額から脂汗が垂れると同時に急に自動ドアが開いた。
「お客様。お召し物をお持ちいたしました。こちらをどうぞ。」
昨日と同じワンピースだが、サイズは今の自分にぴったりと合っている。
「はぁはぁ。お腹が空いた...。行かなきゃ。」
脂肪に塗れた身体でのそのそと宿を出る。すれ違う人に意識はいかない。ひたすらに昨日の料理屋に向かう。
「おお!お嬢ちゃん!来てくれたのかい!待ってな、今料理持ってくるからな!」
山のような料理がテーブルに並べられる。ぐぎゅぐぎゅるるッ!!!
「はぁはぁ、料理...。いっぱい...食べる!!!!!!」
思考は食べること以外は何も無い。一心不乱に目の前の料理を口に放り込む。甘い、しょっぱい、辛い、酸っぱい。様々な味覚が口の中を支配する。
「気に入ってくれて何よりだ!どんどん持ってくるからいくらでも食べてくれ!そう、いくらでも...な。」
並んでいる食べ物がなくなったと思えばすぐ補充される。初日の10倍以上の食事を摂ったが満たされない。もぐもぐ、ふぅ、はぁはぁ。もぐもぐ。昨日の10倍の食事を摂ってもまだ満たされない。食べたことでお腹が膨れ、服が捲れる。座っているが、お腹が地面にくっついているが、まだ食べ足りない。
「お嬢ちゃん。手で食べてたらいつまで経っても腹一杯にならないんじゃねぇか?」
「うん。ごくっ、むしゃっ、はぁ、ふぅ。食べてるのにお腹がいっぱいにぃならないよぉ。」
店主らしき男性が、ホースのようなものを手に持っている。
「これを吸ってみな。うちの店のとっておきなんだ。あっという間に満たされるはずさ。」
「満たされるの?だったらなんでもいい!ぶふぅ。それを頂戴!」
ホースをもらって口に入れる。どろっとした液体が口の中に入ってくる。味は不思議と嫌いじゃない。なんとも形容できない味の液体を飲み続ける。だんだんとお腹が満たされていく感覚。お腹が重くなっていく感覚。
「んぐっ。んぐぅ。ぷはっ。ぶふぅ...ふぅ。やっと...満たされた。」
「いやぁー、よく食べてくれた!いい食べっぷり、飲みっぷりに感服だ!毎日でもうちに来てくれよ!来れるうちはな...。」
意味深な言葉があったが今のアリサには届かない。席を立とうとするが、お腹が、体が重くてなかなか立てない。
「ふぐぅッ、はぁはぁ。ングッッッ!!!」
脂肪をブルンブルンと揺らしながらなんとか立ち上がり店を出る。今すぐ寝たい。あの大きなベッドで横になりたい。
「お客様。お迎えに上がりました。」
なぜか宿で服を用意してくれた係の人が外で待っていた。
「ずいぶんとお楽しみになられたようで大変嬉しく存じます。動くのも大変かと思いましたので勝手ながらお迎えに上がった次第です。さぁ、こちらへ。」
「ぶふぅ...。ぶふぅ...。助かります...。」
ドスッ。一歩。歩くたびに肉と肉がぶつかり合い音が響く。リアカーのようなものに腰掛けそのまま宿へ。満足感に満たされながら深い眠りについた。
ぶく、ぶくぶく、ぶくぶくぶくっ。
「むぐっ。ぶふぅ。」
目が覚めた。視界が細い。呼吸がしづらい。身体が動かない。お腹がすいた。お腹が空いた。お腹がすいた。何か食べたい。なんでもいい。お腹を満たしたい。身体は動かない。動かせない。
「ごぉはぁん...。たべ、ないとぉ。ぜひゅー。ひゅー。ぶふぅ。」
「お客様。食事をご用意しております。こちらをお口へ。」
昨日と同じホースが口に突っ込まれる。脂っこい何かが口に広がっていく。夢中でそれを飲み込む。少しづつお腹に溜まっていくが、すぐにどこかに消えたようにお腹が空く。それと同時に体の端の方が広がっていくような感覚が伝わる。
「いいですよ。お客様。そのまま心ゆくまで存分にお飲みください。」
無我夢中に飲み続けるが、いくら飲んでも満たされない。合わせて身体の端がどんどん広がっていく。ピタッ。お腹と思われる部分が冷たい床に触れたような気がする。
言われるがままに飲み続け満たされることを望んでいる。もう、この満たされない食欲が消えればなんでもいいや。
「あんなに小柄で細身だった方が今ではこんな肉の塊になっているなんて。ああ!なんて素晴らしいの!」
アリサの身体は特大のベッドから肥大した身体の肉が垂れている。もともと小柄だったとは到底思えない。デロデロと肉が広がり、かろうじて胸と思われる部分の肉はその形を保ちながら左右に大きく膨らみ垂れていく。それ以外は、何がどの部分から肥大したのかいっぺんわからないくらいに重なりあっていた。
豊満の国の王女。彼女の際限のない食欲を満たすため自国、他国の王都に訪れるあらゆる人にその欲求をばら撒いて満たされようとしている。この国の食事には王女の欲求が上乗せされる。王都の中心に近いほどその影響は強くなる。この宿屋街はいわば王女の餌場。無限に食べ続けさせ身体に際限のない脂肪を蓄えさせる。他者が肥え太ることで自分が太ることを抑えている。豊満の国とは、一国の王女の美貌と食欲が支配する。一度訪れ中心に近づいて食事をすれば二度と外には出られない。
「満たざれないのぉ。お腹がずいで、ずいで、みだざれないのぉ!!!」
部屋の中心に肉の塊が一つ。隣の部屋からも唸るような音が鳴り響く。また今日も新しい肉塊が増えたのだった。
【ステータス】
探求の忘却者 肉の塊アリサ
身長140cm
体重2t(止まることのない肥満化)
形容し難い幾十の肉の層が部屋に広がる。